前夜祭「アンダーズ サロン」で早くも腕試し!
アンダーズ 東京での「アイデアソン」

写真: 堀口宏明/文: 北條貴文(集英社メンズノンノ編集部)

ハースト婦人画報社が、講談社、集英社、小学館の各社デジタル部門に声を掛け、初の出版4社協同によるITバトル「THE FASHION HACK TOKYO 2015(ザ・ファッション・ハック 東京 2015)」が実現。

本イベントの日程は、Google東京オフィスで開催された8月29日(土)と30日(日)の2日間と、その前夜祭となる8月28日(金)の夜。

「雑誌コンテンツと最新テクノロジーを活用して、ファッションを楽しむ新サービス」を創造すべく、革新的なプロダクトの開発を目指し、日本の主要ファッション誌を文字通り“Hack”(斬り拓く)した3日間をレポートする。

8月28日(金)夜、「ハッカソン」前夜祭を兼ねて、東京・虎ノ門の「アンダーズ 東京」にて「アンダーズ サロン ~THE FASHION HACKプレ・パーティ&アイデアソン~」が開催された。

パーティのゲストは、協賛企業や協力企業、各出版社スタッフ、そして翌日の本番に出場する「ハッカソン」参加者ら約100名。ドレスコードはフレッシュに(?)「Tシャツ」だ。

ちなみに、「ザ・ファッション・ハック 東京 2015」本イベントへの応募総数は620余名で、倍率12倍以上(2015年度の東京マラソンの倍率は11.3倍)の狭き門となった。

通常であればエンジニア中心で男性参加の比率が高くなるハッカソンだが、今回はテーマにファッションを据えていたこともあり、応募者は約半数が女性になるというレアなケースに。出版4社の読者代表、アパレル関係者、プランナー、デザイナー、エンジニアなど多種多様な面々が応募・参加し、しのぎを削った。

個性を尊重し、それぞれの居心地の良さを追求するライフスタイルホテル「アンダーズ 東京」の「TOKYOスタジオ」内に着席すると、テーブルには本パーティでの「アイデアソン」でベースとなるスケッチブックが。

ここで「アイデアソン(Ideathon)」と「ハッカソン(Hackathon)」の趣旨を説明する。

あるテーマを設け、それに対して複数の人々がオープンスペースでアイデアをぶつけ合い、共有しつつ、その場でブラッシュアップしていく連鎖型コミュニケーションが「アイデアソン」。

その「アイデアソン」の企画をもとに、個人または団体で構成されたチームが、短期集中的にソフトウエアを開発し、その優劣を競い合うデジタルイベントが「ハッカソン」。

ともに、“Idea”と“Hack”を“Marathon(マラソン)”を合わせたIT造語だ。

司会・モデレーターは志沢直子・集英社学芸編集部編集長。

「ザ・ファッション・ハック 東京 2015にご協賛およびご協力いただきました企業様に厚くお礼を申し上げます。アンダーズ 東京様、アインズ&トルペ様、ジースター ロゥ様、タトラス ジャパン様、DFSグループ様、プーマ ジャパン様、ラステック様、サインアーテック様、Google様、PayPal Tokyo様、ルーラー様、シーセンス様、サントリー様、誠にありがとうございました。」

続いて、アルノー・ド・サン・テグジュペリ=アンダーズ 東京 総支配人より、「プレ・パーティ&アイデアソン」主催者挨拶。

「このアンダーズ 東京は、各都市の文化や個性を反映させた多種多様なデザインと居心地の良い空間を目指して2014年に誕生しました。そして、様々な分野の芸術が交差し、お互いの情熱や想像力を分かち合い、思いもよらないようなアイデアを生み出す場として、クリエイティブなイベントを行っていくアンダーズ サロンというプラットフォームがあります。今回は、ファッションとテクノロジーという異なる要素が結びつく、『ザ・ファッション・ハック 東京』のコンセプトに共感し、それを楽しむべきアンダーズ サロンとして開催することが実現致しました。』

共催者挨拶は、「ザ・ファッション・ハック 東京 2015」実行委員会を代表して、イヴ・ブゴン=ハースト婦人画報社 代表取締役社長&CEO。

「昨年8月、デジタルとアナログの新しい架け橋を作ろうと、日本初のファッションをテーマにしたハッカソンを開催しました。そして今年は、講談社、集英社、小学館を加えた4社が力を合わせ、雑誌業界をさらに盛り上げられればと期待しています。関係者の皆様、来年も(笑)、宜しくお願い致します。」

つづいてトークセッション。

ゲストは、モデルの鈴木えみさんとITジャーナリストの林信行さん。

公私ともに認めるデジタル派の鈴木さんは、「ソファを1つ購入するとしたら、ウェブ検索やソーシャルメディアを駆使して、世界中のデザインの中からマイ・ベストを選択したい。」という完璧主義者。

だがしかし、雑誌やファッション誌の“ふんわり”とした世界観はモデルになったティーン時代から今も大好きで、編集者のこだわりが詰まった雑誌への信頼感はかけがえのない宝であると認識しているという。

一方の林さんは、世界各国で開かれるIT関連の発表会や展示会を飛びまわり、現地で即時ツイッター配信するという凄腕(指)のITジャーナリスト。

3Dプリンタでのファッションデザインや、ヴァーチャル試着アプリなど、「ファッション×デジタル」に関する海外での発展状況をスクリーンで説明しながら、「ファッションビジネスは今までの『B to C(Business to Consumer)』から『B to I(Business to Individual)』の時代になる。」と分析した。

ここで、志沢・モデレーターから、「個人の存在、趣味趣向、拡散力がかつてないほどに高まっているのでは?」と問いかけ。

鈴木さんは、「インスタグラムのフォロワーは50万人以上。この数になってしまうと、責任を感じます。間違ったことは言えません(笑)」と、一見、無限の自由を想定してしまいがちなデジタル世界へのSNSリテラシーについて自分なりの考え方を述べた。

それを受けた林さんは、「読む雑誌を切り替えると気分も変わる。自分の好みを検索しているだけでは見識が狭くなってしまうが、雑誌は反対に広げてくれる。その点でいうと、ピンタレストなどは右脳を刺激するツールのようなものであり、数多く検索すると自分が本当に求めているモノを発見し、そして驚くんです」と、鈴木さんと同じくデジタルを突き詰めた際に起き上がる意識の変化を指摘した。

「深く掘り下げる欲深さと正確さ、そして雑誌やアナログが持つ偶然性。この2つの要素が、アナログとデジタル、ファッションとテクノロジー、それら相反する要素が結晶するうえでのカギになるのではないか」と、志沢・モデレーターは中締めした。

続くフォトセッションでは、emi × nobi の貴重なツーショットを、各メディアや来場者がソーシャルメディアに即時大量投下。

鈴木えみさんの衣装はすべて私物。

黒のフリンジドレスは「RIKA」、ブーツは「TOGA」、チョーカーは「MAIDEN」とのこと。

プレ・パーティの第2部は「アイデアソン」。

これは、翌日に本番を迎える「ハッカソン」開催前の準備運動のようなもので、本イベント参加者はもちろん、来場した関係者の中からも希望者が参加した。

「アイデアソン」のモデレーターは、矢吹博和・HackCamp 取締役副社長 Chief Ideathon Officer(写真右上)。

矢吹さんの指示で、席で隣り合わせた2人がペアとなり、それぞれ整列して二重の大きな輪になって待機。

そして始まる(数秒の自己紹介と)4分間のブレインストーミング、加えて1分間のメモタイム。一式5分を5回繰り返すのだが、このリズム感と躍動感はスポーツに近いかもしれない。

もちろん、全員が初対面。コミュニケーション能力も問われる「アイデアソン」であるが、そこには重要なルールが1つだけ存在する。

そのルールとは、「プレイズ・ファースト」。相手のアイデアの良い所に光を当て、さらなる発展を相互に促し合う精神だ。

都合5回のブレインストーミングでブラッシュアップされたアイデアをシートに書き込む参加者たち。

自分のアイデアでも他人の意見で参考になったアイデアでも、すべて自分のものとして発表でき、アイデアの権利は会場の全員が保有する。この“他家受粉”こそ、「アイデアソン」のポイントだ。

この日の「アイデアソン」参加者で最多いいね!を獲得した優勝者は、先輩に誘われて参加したという会社員の山中徹さん(写真右下)。

アイデアは、「ダサい人のビッグデータ」。内容は推して知るべし。

表彰された8人のうち、翌日からの「ハッカソン」本番への参加者は2人。

果たして、最多得票を含め、この日の参加者に共有されたアイデアは明日も誰かに使われるのか(ルール上、誰もが使用権利を持つ)、それとも、別のかたちに進化するのか――。

来場者全員が「雑誌×テクノロジー」の可能性を確信しつつ、アンダーズ 東京を後にした。

大変有意義な前夜祭となった一夜であった。

▽▽▽「ハッカソン」1日目につづく▽▽▽