優勝チームほか4賞決定!
「ハッカソン」、最高!

写真: 杉山和行/文: 北條貴文(集英社メンズノンノ編集部)

8月30日(日)、2日目を迎えた「ザ・ファッション・ハック 東京 2015」はいよいよ最終日に突入。

8チーム・47人の参加者たちは、サントリーの「集中リゲイン」をいったい何本飲んだのだろう……。

スクリーンにはタイムリミットまでの残り時間が表示され、まるで入学試験のように、参加者と関係者の心を急かしたてていた。

独りで黙々と作業していた、チームB:「クローゼット」の辻田幸廣さん。夜通しで可愛らしいハンガーを題材にアニメーションを制作中。

「UX(ユーザーエクスペリエンス)のディレクションをしています。このチームのプロダクトは、毎日クローゼットを開くワクワクを体験するモノです。プレゼンでもワクワクを感じてもらえるよう、ギリギリまで頑張ります。」と、辻田幸廣さん。

こちらがチームB:「クローゼット」の女子メンバー。(左から)上野麻紀子さん、八木彩香さん、丹下友希さん。

後ろの時計は気にせず、プレゼンの段取りに集中。

チームCの(左から)新嘉喜りんさん、大藤直子さん、宗若奈さん、梶谷健人さん。

「ルナルナ」と「グーグルカレンダー」の融合を図っているが、プレゼン本番前のこの日の気分にピッタリの服装とは、どんなものなのだろう。

チームDの(左から)金田卓士さん、高山紘侑さん、桑田純哉さん。

エンジニアの参加がほとんどだという通常のIT業界での「ハッカソン」は、おそらく、彼らのような男子校ムードで進行するのであろう。

同じくチーム「DAN」の井内麻結さん。「HOW?」と記されたカスタマイズ画面が気になる。リーダーの岩﨑弾さんはチームを鼓舞しつつ、本番用の帽子を装着。みんな準備は万端だ。

開発時間、終了。

思わず拍手が起こったが、チームAの宮武俊介さん(左端)と上森久之さん(左から2人目)は目を合わせたまま。

企画が合議のもとに変遷していくチームが多いなか、初日の「アイデアソン」から終始一貫して「女性誌 for MEN」のコンセプトでまっしぐらのチームA。成就なったのか。

会場がザワザワ。

プレゼンテーションに向け、審査員がGoogle本社に到着し始めた。

(左から)審査員は、奈良裕也さん(SHIMAヘア&メイクアップアーティスト)、鈴木えみさん(モデル)、衆議院議員の小池百合子さん、渡邉康太郎さん(takramクリエイティブディレクター/デザインエンジニア)、審査委員長をイヴ・ブゴン=ハースト婦人画報社CEOが務める。

そして、開発終了から休む間もなくプレゼンテーションが始まった。

各チームに与えられた時間は3分のみ。間に合わなければ途中でも退場となるという鬼の進行管理だ。

チーム「A」、いきなりの、「雑誌ヤヴァい! 読まない! 買わない!」のキャッチにどよめきが走る。

チーム「クローゼット」、企画の『tomosu Hanger』を雑誌の付録としてパッケージ提案。読者目線、広告タイアップ目線で、フィニッシュまで持っていく心意気に拍手が起こった。

チーム「M&Ms」、リーダーの安藤真衣子さんの毒舌プレゼンは本日も絶好調。審査員の興味を鷲づかみしつつ、自撮りアプリを起動。

顔のパーツが似ている人気モデルが検索され、画面に映し出される。「顔、ちゃんとできたね!」と、木村優里さん(左)と杉本みゆきさん(右)はホッと胸をなでおろす。

8チームのプレゼンが終わると、審査員がそれぞれのブースを回り、実際にアプリのデモ画面をチェック。チーム全員が熱意をもって審査員を出迎える。

こちらはメリハリの効いたプレゼンで注目の的となったチーム「M&Ms」の自撮りアプリ「ダレフウ?」のデモ画面だ。

スマホやタブレットのカメラで自撮りすると、顔のパーツデータから“自分に似ている”とされるモデルが紹介され、そのモデルが掲載された雑誌電子版が同時にピックアップされる。狭い自由意思の範疇を超えた、夢のリコメンドを享受できるアプリだ。

衆議院議員の小池百合子さんが試してみると、なんと、人気モデルの竹内玲奈さんに似ていると診断。会場が今日一番の盛り上がりを見せた。

チーム「押忍!」のブースでは「OTOKOGI FASHION」に男性陣が群がっていた。

たまの休日にしかスーツを着替えない男には、本当は目指したいスタイル、欲しかった洋服がある。そこに「指令」が加わるとゲーム感覚でキャッチアップできる。友情も冷やかしも同情も一律「いいね!」に集約される、フェイスブック認証でのログインがカギだ。

ファッションにオクテな男ゴコロを見事に掴み、自他へのエクスキューズとBUZZの両方を加味することに成功した。(左端から時計回りに)髙濱健太さん、中川裕也さん、玉仙拓也さん。

こちらはチーム「アッシュ」の「MF」。好みのロック歌手のYouTubeタグと、ロック歌手の公式インスタグラムのハッシュタグが連携し、それに関連する世界各国のロックな雑誌誌面が次々と紐付きレコメンドされていく。

ロックは今も昔も(たぶん)ロック。アーカイブ誌面を想定しても問題ないのだろう。ヒッピー、モッズ、パンク、ガーリー、渋谷系など、(トラッド以外)音楽とファッションの結びつきを大切にする人たちにはウケそう。シティボーイだと洋服のスタイリングに今の空気感が重要になるので参考用に。

デモ画面の実演プレゼンが終わると、審査員は一旦別室に退席。

各々の評価を集計し、グランプリほか各賞の選定に入った。

そのころ会場では、47人の出場者それぞれが、やりきった感に溢れたナチュラルハイなムードに。すでに各チームの垣根を越えた名刺交換も始まった。

そして、親睦会用の料理も続々と準備。サントリーの「ザ・モルツ」や「ジムビーム シトラスフルーツ缶<グレープフルーツ>」も、氷でキンキンに冷やされつつあった。

結果発表。

「MAGAZINE INNOVATION AWARD」受賞は、チーム「Spoilers」・開発アプリ「Peek!」。

ファッション誌のヴィジュアルにスマホの認識カーソルを合わせると、見開ページが360度パノラマに展開、編集者からの裏話、バックステージ動画がスマホ内で再生されるなど、ファッションの裏側を文字通りPeek!(こっそり盗み見る)できる。

副賞は、アンダーズ 東京から「アンダーズ タヴァン」での5万円分の食事券、DFSグループより旅行券5万円分、「アインズ&トルぺ」からオリジナルコスメセット。

「雑誌から飛び出して、360度の景色が広がるデモ画面のプレゼンテーションがすばらしかったです。雑誌のイノベーション、そして新しいチャレンジというコンセプトにピッタリの賞だと思います。」と、プレゼンターの小池百合子さん(後列右端)。

「FASHION INNOVATION AWARD」受賞は、チーム「アッシュ」・開発アプリ「MF」。

4人チームだが、エンジニアの會田昌史さんは自宅でギリギリまでコーディング作業中のため、授賞式に間に合わず。「ジースター ロゥ」のデニムと、DFSグループより5万円分の旅行券が副賞。

「僕も音楽とファッションは切り離せないものだと思っています。(メジャーなオススメではなく)自分が実際に聞いているアーティストのYouTubeから派生するのがいい。実際に使ってみたいアプリだと思いました。」と、プレゼンターのSHIMAヘア&メイクアップアーティストの奈良裕也さん(左端)。

「TECHNOLOGY INNOVATION AWARD」受賞は、チーム「クローゼット」・開発アプリ「tomosu Hanger」。

クローゼットの中にしばらく袖を通していない服があると、ハンガーが段階別に光って知らせてくれる。どの服と合わせるとよいか、というコーディネートを光でオススメすることも。副賞は、プーマ ジャパンより新作トレーニングシューズ「プーマ イグナイトXT」と、DFSグループより5万円分の旅行券。

「テクノロジー、ユーザー体験、ビジネス、3つのバランスが整ったサービスです。データベースが世の中の流行によって更新されるので、自分の服が変わらなくても、着合わせのオススメは変化していく。自分のクローゼットと世の中を結びつける仕組みです。」と、プレゼンターのtakramクリエイティブディレクターの渡邉康太郎さん(後列左端)。

急遽、設けられた審査員特別賞の受賞は、チーム「押忍!」・開発アプリ「OTOKOGI FASHION」。イヴ・ブゴンCEOの推薦で決まった。

「男3人が力強く結集した時点で、女性が誰もメンバーに加わってくれませんでした(笑)」と、VネックTシャツの玉仙拓也さん(左端)。中川裕也さん(左から2人目)と髙濱健太さん(同3人目)もVネックTシャツだ。

「OTOKOGIメーターが数千人のいいね! まで到達すると、男気で買わなくてもブランドから洋服がプレゼントされるなど、タイアップの可能性もありそう。ベースがfacebookという、ブランドが欲しがるマーケティング的視点も考慮されていて、すばらしいと思いました。」と、イヴ・ブゴン=ハースト婦人画報社 代表取締役社長&CEO(右端)。

最優秀「BEST FASHION HACK AWARD」の受賞は、チーム「M&Ms」・開発アプリ「ダレフウ?」。

賞金20万円と、タトラス ジャパンより「タトラス」2015年秋冬新作アウター、そして6 ヵ月以内の商用実装が条件の、出版4 社計1,000万円相当のWEB広告枠が副賞。

「6ヵ月以内に絶対に商品化して、1,000万円の広告枠を使い切りたいと思います!」と、リーダーのフリーエンジニア・安藤真衣子さん(左から2人目)は決意表明。

「診断系が好きな女性は多いもの。雑誌が一歩、踏み出せる可能性を感じました。」と、プレゼンターの鈴木えみさん(左端)。

こちらが、イタリア・ミラノを拠点とする「タトラス」2015-16年秋冬シーズンの新作ダウン。ダークトーンの迷彩柄にゴールドとシルバーのラメが入る。モデルは優勝チーム「M&Ms」の杉本みゆきさん(左/レディスを着用)と渡辺麻翔さん(右/メンズを着用)。

各賞発表の後、「ザ・ファッション・ハック 東京 2015」実行委員会を代表して、イヴ・ブゴン=ハースト婦人画報社 代表取締役社長&CEOから総評。

「本日は沢山の面白い案が出ました。昨年と比べても、レベルは上がっていると思います。いつもはライバル関係にあるハースト婦人画報社、講談社、集英社、小学館の4社ですが、今後もファッションとテクノロジーを掛け合わせた企画を一緒に行えればと思います。国からのサポートも期待して、小池百合子さん、ぜひ一緒に取り組んでいただけませんでしょうか(笑)。素晴らしいオフィスと各種サポートを提供してくださったGoogleさんを始め、全ての協賛・協力企業の皆さま、誠にありがとうございました。」

ブゴンCEOの締めの言葉をいただき、最後に審査員と8チーム全員で記念撮影。

おつかれさまでした。

そして、懇親会へ。

藤田基予・小学館 女性誌編集局 取締役から乾杯の唱和。

「スピーチの持ち時間は3分です(笑)」と、「ハッカソン」実行委員会より鬼の進行管理。

「紙の出版社とテクノロジー企業との関係は、水と油のようなもの。ですが、だからこそ、今日お集まりいただいた方々の活躍の場があるということです。今日はその可能性を教えていただきました。壁の向こう側を目指して、新しい化学反応に期待しましょう。」

ここで3分経過。

「仕事があるから、楽しいんです。明日もお仕事、頑張りましょう。乾杯!」

チーム「アッシュ」エンジニアの會田昌史さん(左から2人目)も、なんとか懇親会に間に合った。

前夜祭のプレ・パーティ&アイデアソンでのゲスト、ITジャーナリストの林信行さん(中)も懇親会に駆けつけた。

中締めは、神保純子・講談社 第二事業局 第二事業戦略部 部長より。

「今、私は第二事業局 第二事業戦略部という部署に所属しております。講談社も編集局から事業局と名前をかえました。コンテンツや媒体を軸に様々な事業に展開することは、今の時代の編集者にとって当たり前の仕事になっています。今日はたくさん勉強させていただき、嬉しいことがたくさんありました。ファッションと雑誌とテクノロジーの未来を考えるというイベント、大成功だったと思います。本日は本当にお疲れ様でした。」

ハースト婦人画報社と、講談社、集英社、小学館の各社デジタル部門がタッグを組んだ、初の出版4社協同によるITバトル「ザ・ファッション・ハック 東京 2015」、これにて閉幕。

来年も果たして4社の協同開催はありえるのか。

それとも4社の精鋭部隊が「ハッカソン」で対決するのか。

「ファッション×雑誌×テクノロジー」が紡ぐ未来は、輝きに満ちあふれている。